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東京地方裁判所 昭和41年(むのイ)617号 決定 1966年10月17日

主文

原裁判中保釈保証金没取の部分を取り消す。

理由

一、弁護人の申立理由は、別紙抗告の申立と題する書面および抗告理由補充書と題する書面各記載のとおりであるから、ここにこれらを援用する。

二、当裁判所が職権により取り寄せた関係記録によれば、被告人は、昭和四一年八月三〇日に保釈で身柄釈放されてから、その制限住居である神奈川県茅ヶ崎市赤羽根九四番地隅田アパート内吉田久子(実妹、身柄引受人)方に、それが制限住居であることを知りながら居住しなかったこと、同年九月一三日に、右久子からの連絡により、制限住居に居住することを約しながら翌一四日には別件で再び逮捕されて同月一六日勾留され、結局制限住居に居住することなく、同年一〇月一日に保釈が取り消されたことなどが認められ、右の事実によれば、制限住居に居住しないという保釈の条件違反の理由で本件保釈が取り消されたことは、相当であり、この点に関する申立人主張の各事由は、理由がない。

三、次に、保証金の没取について判断するに、保釈が取り消されたことは、前記認定のとおり相当であり、これと共に保証金を没取した原裁判には何らの違法はなく、申立人が、その違法をいうが如き部分は、何ら理由がない。しかし、関係記録によれば、右吉田久子は、身柄引受人として、保証金を納入したのち、被告人が保釈された当日を除いて、その身柄を確保することができなかったが、被告人を制限住居に居住させようと種々努力し、最後には被告人もそれを約しながら、翌日まで居住を延期したため、当夜逮捕されて、右久子の努力が徒労に終ったことが認められ、右の事実によれば、保証金を納入した身柄引受人として、右久子のなした努力は、相当酌むべきものがあり、保証金の没取は、酷に過ぎると認められる。

四、よって、原裁判のうち、保釈取消の部分は相当であるが、保釈保証金没取の部分については、申立の理由があると認め、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第二項により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 堀義次 裁判官 立原彦昭 片岡正彦)

<以下省略>

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